前回の記事で交渉における3つのキーポイントについて解説しました。
- 相場を知る
- 必ずWin-Win
- BATNA
この記事でも上記3つのワードを使っていくので、よくわからないという方は前回の記事もぜひチェックしてみて下さい。
日常的に交渉を使うようになった中で、現在の勤め先への給与交渉もしました。そしてこれは成功し、年収100万円アップを実現しました。
キリの良い数字をタイトルにしたかったので100万円としましたがフェイクです。実際はボーナスへの影響などを含めるともうちょっと上です。
今回はこの給与交渉について話をしていきます。
目次
給与交渉をしようと思ったきっかけ
パンドラの箱
そもそも給与交渉をしようと思ったきっかけは、自社の中途採用ページに給与レンジが載っていたのを見たことです。これはまさしく(会社にとっての)パンドラの箱を開ける行為でした。
月給24万〜50万円と書かれていて、僕の月給が27万円だった(この金額はフェイクです)というイメージです。
僕は新卒入社で約5年の勤務年数だったので、それだけを考えればそこまで不自然な金額ではありませんでした。
しかしながら中途採用ページに書かれている「必須スキル」や「歓迎スキル」を全て持っていて、何度も昇給タイミングで高い評価を受けていたので違和感を感じました。
市場価値とのズレ
記憶を掘り起こして気づきましたが、話は単純です。僕が入社した当時よりも、職種(エンジニア)の市場価値が上がっていました。
他社が高い金額で募集を出しているから、自社も給与レンジを上げて対抗していた。そういう理由です。
また、これは仕方のないことですが転職を挟まずに同じ会社で仕事を続けると市場価値とのズレが大きくなってしまいます。
どんなものでも、相場は「需要と供給」の変化によって変動します。給与にも当てはまり、給与の相場(市場価値)は変動しています。
5年という時間は短いようで、僕が仕事をしているゲーム・IT・Webという変化の激しい業界ではエンジニアの市場価値が変動するのに十分な時間だったようです。
これは各社の採用情報をチェックすることや転職エージェントと話すことで知ることができます。前回の記事で解説した相見積もりと同じ理屈ですね。
僕のケースでは自社の採用ページを見て知るというなんとも皮肉なことになってしまいました。交渉における1つめのキーポイント『相場を知る』はこれでOKです。
転職活動も検討
見て見ぬふりをすることもできましたが、ちょうど今の仕事内容を続けていて自分の成長につながるかどうか疑問だったこともあり、転職も含めて検討することにしました。
会社そのものは新卒入社する時に十分に検討した上で選んだ会社ですし、気に入っています。給与を市場価値に合わせようと思ったら転職一択で考える人も多いと思いますが、僕は転職活動と給与交渉を同時に行いました。
想定外の出来事ばかりだった
この給与交渉は結果的にうまくいったのですが、正直に言ってベストな行動は取れませんでした。
まず、年1回ある昇給評価の面談で交渉するのがベストでしたが、行動を起こすのが遅かったため間に合いませんでした。
結果的に会社側に無理をさせてしまうことになりましたが、昇給額が確定するタイミングには間に合ったのが幸いです。
給与交渉が決裂したら、転職するというBATNA
次に、転職先として有力な候補からのオファーを取った後で給与交渉することにより給与交渉が決裂したら、他社に転職するという強力なBATNAが生まれ、給与交渉を優位に進められる想定でした。
もし給与交渉がきっかけで人間関係がこじれるようなことがあったら転職できるというのは安心感になります。実際そんな心配は全くしていないのですが(笑)
BATNAが生まれる前に交渉スタート
ところが、これに関してはTwitterで転職活動について投稿して1時間後くらいには人づてに僕の上司のところまで情報が届きました「あ、それうちの社員ですわ」となったそうです。(人脈ってすごい)
チャットでこの件について確認が来たので
- 給与が市場価値とズレていることから給与交渉をしたいこと
- 仕事内容について相談したいこと
- それと並行で転職も検討していること
以上を正直に伝えて、面談しました。
この時点で、希望の給与として提示する金額は決めていたので、それも伝えました。交渉は、とにかく具体的に、本気度が伝わるようにすることが重要です。
雑談の中で「もうちょっと給料あげてもらえませんかね〜」などと言っても「考えとくわ〜」と返されて終わりということです(汗)
話の内容については、納得してもらうことができました。市場価値と合わせるために転職を検討するのは普通のことなので、転職活動は続けても問題ないと言ってもらうこともできました。
仕事内容については面談をした上司が決められる立場でしたから、変更することがすぐに決定しました。提案内容についても転職と比較して魅力的なポイントが多かったため、給与交渉が通れば社内に留まると伝えました。
結果的にこれで良かった
そして交渉は成功しました。給与については、僕が提示した金額を上回っていたので更に驚きです。それだけ、僕に留まってもらうことが会社にとってのWinであったということですね。期待されているのは喜ばしいことです!
以上のように、交渉において最重要である『BATNA』は想定通りではありませんでしたが、結果的には良かったと思います。
というのも、このケースでは『Win-Win』のように「自分と相手」だけではなく「自分・現在の勤め先・転職先」の3者で考えなければいけないからです。
オファーを取るまで転職活動を続けてから給与交渉し「社内に留まる or 転職する」のいずれかを選択すると、どこかでLoseが生じます。Win-Win-Winにはできません。
オファーを取った後で社内に留まった場合、転職先にとっては時間だけ取らせてしまう形になるので、これを避けられたのは幸いでした。(実際、複数社のオファーを取ってどれか1つ選ぶのはよくあることだと思うのであまり気にされないかもしれませんが)
社内に留まる意向が強くなったこともあり、転職活動中に面談して頂いた各社には転職する可能性が低いことをお伝えしていました。そのため、特に選考は受けていません。
それでも面談の時間は取ってもらっているので…。僕からも情報提供をしたり、中には開発の相談に乗ったものまで(笑)
面談して頂いた各社をYoutubeチャンネルで紹介するということも考えて許可まで頂きましたが、あまり良い動画を作れる自信が無かったのでこちらは断念しました。
そこまで考えて転職活動する人は珍しいと思いますが、また次の転職活動や、仕事で関わることもあるかもしれません。なるべくLoseを作らない行動を心がけて損はないかと考えています。
市場価値とのズレは視点で変わる
僕のケースでは、以下のように条件がいろいろと整っていたので「運が良かった」で片付いてしまうかもしれません。
- エンジニアの市場価値とのズレが事実として発生していた
- 担当している新作ゲームのリリースが遅れていたことで、昇給も先送りになっていた
- 仕事内容の変更もセットだった(よりスキルが求められる、難しいものへ)→ 会社側のWinでもある
- Twitterで転職活動について公言していたことで「他社に転職する」というBATNAに対して実際にオファーを取らなくても本気度が伝わった
- Twitterの投稿で転職先に希望する年収についても書いていたので、これが交渉の目安となった
でも、逆に言えば条件さえ整っているなら交渉しない手はないでしょう。いくつかの条件は自分で作り出すこともできます。
市場価値とのズレについては自分ではどうすることもできないものですし、給与の目安は会社が決めることなので市場価値とズレていようがウチはこの金額で。というスタンスを貫いているところも多いです。
しかしながら、この市場価値とのズレについては気づいていないだけという可能性もあります。
ゲーム業界という枠では元から高水準
実のところ、僕の勤め先は「ゲーム業界」という枠で見ると元から給与水準が高い方です。
よって「ゲーム業界」における市場価値とのズレは発生していないというか、給与が高いという方向にズレています。そこから視点をシフトしていくと
- スマホゲーム業界の中では → ちょっと高い方
- 大手スマホゲーム会社の中では → 普通
- エンジニアとして転職可能な他の業界も含めて、給与水準の高い会社の中では → 低い
最後のはちょっと強引ではありますが「他社へ転職する」というBATNAが存在する以上、この考え方で問題ないのです。
業界内での市場価値ではなくスキルに対しての市場価値で考えれば良いということです。
もちろん、これは同じ業界での転職しか考えていない人は使えない考え方です。
僕は業界を絞らずに転職活動をしていたため、あくまでスキルに対しての市場価値とズレているというのが交渉のポイントでした。
ここまでの話からも、給与交渉するにせよ、転職するにせよ給与を上げたいと思うなら『市場価値の高いスキル』を身につけておくことが重要と言えます。
市場価値を知ることが相場を知ること
どのスキルにどんな市場価値が付いているのか知ることがスタートラインです。まさしく相場を知るというのが交渉のスタートラインですね。
といっても、仕事選びは給与だけが基準ではありませんからやりたいことを優先するのも大切です。やりたいことと市場価値の高いスキルの方向性が一致しているなら、身につける努力をして損することはないでしょう。
相場を知るのは損しないために重要なポイントであると前回の記事で書いた点はここでも変わりません。もしあなたが高度なスキルを持っているなら、それを安く買い叩かれないためにも市場価値を把握しておくことは重要です。
給与交渉は高度なスキルがなくてもOK
ここまでスキル云々の話をしてきましたが、僕は市場価値が非常に高いスキルを持っているわけでもありません。
社内外を含めて名前が広がるような大きな実績を上げたこともありません。社内の表彰制度もあるのですが、一度も表彰されたことはないです。
それでも縁の下の力持ち的に、周囲の仕事を支えることができていると思います。特にエンジニアは、そういう立場になりがちではないでしょうか。
目立つ実績を上げていなくても、会社の業績に貢献している人はたくさんいるはずです。
同じ会社で5年間、働き続けられたということだけでも大きなスキルの1つであると考えています。社内の環境に慣れているからこそ、特殊なスキルを持っていなくても入社したての人より手早く正確な仕事ができることもあります。
長く勤めているという事実だけでも、他社に転職してほしくない理由になるのではないでしょうか。給与交渉してみたらあっさり通ってしまうかもしれませんね。
そして、周囲の誰もマネできないような高いスキルをお持ちの方はぜひ給与交渉して下さい。
転職する時でも大丈夫です。提示された金額よりもっと上を狙えると思うなら、交渉しましょう。自分で交渉するのが怖いなら、転職エージェントに任せましょう。
そうやって上のレベルにいる人たちの給与が上がってくれないと、僕ら普通の人の給与も上がる余地がありません(汗)
業界全体のためと思って、よろしくお願いします(笑)
まとめ
給与交渉については誰でも当てはまるような内容ではないかもしれませんが
- 日常の中で支出を下げるために
- 人間関係を改善させるために
- 仕事を円滑に進めるために
交渉に慣れることで、他のことにいくらでも応用できると思います。
給与交渉が成功した僕は「運が良かった」だけかもしれませんが、そう振り返ることができるのは行動したからです。
運の良さというのは、行動力で高めることができます。
宝くじに当たった人は「運が良かった」だけの事ですが、宝くじを買わなければ当たる確率は0%です。
宝くじは買っても外れる確率が高くてお金をムダにしやすいですが、引っ越し屋との交渉も給与交渉も失敗したところで損することはありませんし、経験として蓄積されていきます。ぜひ、行動してみて下さい。
この記事が皆さんの行動を起こすきっかけになれば幸いです!